2017年06月
湖上から失礼いたします。ローザンヌの街を後にして、レマン湖を真っ直ぐに南下。湖上で国境線を超えまして、至はミネラルウォーターの名産地として、世界にその名をはせるエヴィアン・レ・バン。レマン湖を挟んで真向かいにある、ローザンヌから35分ほどの船旅です。
エヴィアンの港に到着しました。湖畔には遊歩道とカジノやホテル、レストランが立ち並んでいます。中心部は東西に2km程、のんびり散歩を楽しむのに丁度良い広さでしょうか。
路地の奥、正面のアールヌーボー風の建物は、エヴィアン水の水源「カシャの泉」に隣接した飲水療養施設の入り口。
1903年に建てられた施設で、現在はエヴィアン社の所有物。上部に「カシャの泉」とレリーフで書かれています。
飲水療養施設の反対側に回ってきました。こちらに水源があります。
エヴィアンには複数の水源があり、どこの泉からも市販のミネラルウォーターと同じエヴィアン水が流れ出ています。ボトルさえあれば、無料で汲み放題です。そんな水源の中でも最も有名なのが、こちら「カシャの泉」。1789年にフランスの公爵がこの泉の水を飲んだところ、持病の腎臓結石が治った事から、エヴィアン水は有名になりました。
19世紀後半からは飲水及び、エヴィアン水を利用した温浴の保養地として賑わい、ホテルやカジノが建てられ、現在に繋がるリゾートに発展しました。
「カシャの泉」にほど近く、やはりアールヌーボー調の建物。こちらは街の背後の丘陵へ登るケーブルカー乗り場。氷河地形のレマン湖に面した街だけに、街は斜面に出来上がっています。歩いて登るのはちょっと大変なのですが、ケーブルカーで上がれば楽チンです。
1907年に運行を開始したこちらのケーブルカー。1969年に一度その運行を終えましたが、2002年にリニューアルして運行再開。といっても車体は100年前のまま。そもそも丘の中腹に立つホテルが運営している事もあり、完全無料。採算性を考慮しなくて良いせいか運転手さんも暢んびりしています。ノスタルジックな気分に浸りながら車窓の旅、いかがでしょうか。ちなみに冬季は運休しています。
ノートルダム・ダソンプシオン教会の斜向かいに観光局があります。教会周辺では週に二度程朝市が立っています。午後には店じまいしてしまうので、興味のある方は午前中にお尋ねになることをお勧めします。
さか
スイスの中で一番標高の低いマッジョーレ湖畔。その中心地となるのが夏の映画祭で有名なロカルノです。低いといっても、海抜約200m。ゼロメートル地帯もある日本からすれば全く低くないのですが、海の無い山国としては十分に低い。しかもアルプス山脈の南側という事で、気候は温暖、植生も南国、街並みはすっかりイタリアな南国風リゾートです。かつてはマッジョーレ湖を経てイタリアとスイスをつなぐ交通の要衝、現在でもティチーノ州の州都ベリンツォーナから国鉄が、そして私鉄のティチーノ地方鉄道がイタリアのドモドッソラまで繋いでいます。
旧市街地は2007年以降、一般車両の入らない地域となっていて、そぞろ歩きにぴったりです。中心となるグランデ広場Piazza Grandeには春になると巨大ステージ&スクリーンが登場し、映画祭の際にはメイン会場となります。その他の裏路地も南国の中世を思わせる佇まい。ただし、ここはやっぱりスイス。メインストリート以外を散策しようとすると、どうしても急坂を登ったり下ったりしなければなりません。歩きやすい靴と服装をお勧めします。
ロカルノ一番の見どころにして、中心部から標高約170m程上がったオルセリーナ地区にあるのが、冒頭の写真で全景をご紹介しているマドンナ・デル・サッソの聖所Santuario della Madonna del Sasso。15世紀末に創建され、数多くの巡礼者が訪れる巡礼参詣聖堂です。その起源は、1480年8月14日から15日にかけての夜、この地に隠棲していたフランティスコ派の隠修士バルトロメオが、聖母マリアが現れるのをみたという奇跡なのだとか。その後幾度かの増改築を経て、現在の姿になったのは1912年のこと。17世紀の改築時に作られた、「最後の晩餐」などの素焼きの彫像が各所に展示されています。聖堂内の装飾はとても豪華。通路を挟んで左右に分かれて設置されている珍しいオルガンがあります。素人にはどのような構造になっているのか、想像もつきませんが、それだけに興味をそそられます。
中心部から聖所まで自力で登って下る事も出来ますが、お勧めは1906年に運行開始したケーブルカーです。全長825m、最大勾配300‰。現在使用されている車両は1958年生れ。市街地の中を曲がりくねりながら、のんびりと登っていきます。山麓駅はロカルノ駅から大通りを挟んだ斜向かい。山頂駅は聖所の少し上。途中二箇所の停留所がある他、下りは聖所の真横にも乗り場があります。停留所に人がいれば止まってくれるようです。もちろん片道だけケーブルカーを利用して、片道徒歩で巡礼者の気分を味わってみるのも良いかもしれません。
旧市街を抜けた先、その終点に位置しているのが、ヴィスコンティ城Castello Visconteoです。12世紀に創建された古城ですが、14世紀半ば以降ミラノのヴィスコンティ家に所有され、増改築。現在目にする事のできる建造物の大半はこの時に作られたものだそうです。1925年にはロカルノ条約を生み出した国際会議がここで行われたのだとか。内部は現在、考古学博物館として公開されています。
ロカルノからスイス西部(ヴァリス州やベルン州、レマン湖方面)へ向かう場合や、イタリア方面に向かわれる場合にお勧めなのが、ティチーノ地方鉄道、通称「 チェントヴァッリ(Centovalli=百の谷)鉄道」です。マドンナ・デル・サッソの聖所へ向かうケーブルカーと同じ人物によって建設計画が建てられましたが、第一次大戦の影響もあって難航し、開通したのは1923年。ロカルノから百の谷と呼ばれる渓谷地帯を抜けて、イタリアのドモドッソラまで走っています。全長約51.25km、最大勾配60‰、標高差約600mの国際列車です。山間部を走るため軌道は狭軌の1000mm、47の橋を渡ります。緑豊かな渓谷の中を所要約2時間の旅は、春の新緑から秋の黄葉など、四季折々の美しい姿を見せてくれます。残念ながら、車窓からはなかなか良い写真が撮れないので、こちらのリンクから鉄道会社の写真集をご覧ください。
さか
イタリアとの国境にまたがるマッジョーレ湖の湖畔にある、人口五千人程の街アスコナ。20世紀初頭から多くの芸術家が訪れ、その名を知られるようになりました。旧市街に残る中世以来の佇まいや湖畔沿いに続く華やかな彩りの家並み、「マッジョーレ湖の真珠」と呼ばれる所以です。
湖畔沿いに続くプロムナードからの眺め。マッジョーレ湖は面積が212.2㎢で、イタリア第二の湖。スイス側にあたるのは、そのうちの1/5程度。地図上ではなぜかジグザクに国境線が湖上を横断しています。
中央の時計塔が、旧市街の中心に立つ聖ピエトロ・パオロ教会 Chiesa parrocchiale SS Pietro e Paolo。13世紀に創建。現在の建物はバロック様式で、1860年に完成しています。
旧市街には昔ながらの建物を利用した、お洒落なレストランやお店が並び、ウィンドウショッピングも楽しいですよ。
湖畔にはレストランが軒を連ねています。イタリア語圏なだけにイタリア料理がメイン。そしてパスタの茹で加減が絶妙なアルデンテ、なのも他の地域とは全く違います。こちらは季節もののアスパラガスを使った「春のカルボナーラ」。普段暮らしているドイツ語圏では、パスタは茹ですぎが普通なのですが、同じ国の中でここまで違うかと思うくらい美味しゅうございました。
小さな街なので、半日もあれば周れます。鉄道は通っていませんが、ロカルノからバスで15分程度。ティチーノ方面にお出での際は、是非お立ち寄り下さい。
さか
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