スイスと云えば、真夏でも雪を頂いた壮大なアルプスの山々や氷河、緑の絨毯の中、のんびりと草を食む牛達がたたずむ牧場と湖。近年、映画『テルマエロマエ』で有名になった古代ローマのイメージとはかけ離れていますが、実は意外にも多くのローマ遺跡がこの国には点在しています。その中でも最大の規模を誇るのが、スイス北西部の中心都市、バーゼル近郊にある『アウグスタ・ラウリカ(Augsta Raurica)』です。
紀元前44年に、カエサルの部下ムナティウス・プランクス将軍によって築かれた軍事要塞を基礎として、この地にローマ植民地が建設されました。現在のバーゼルがライン川沿いの交通の要衝、フランス、ドイツに隣接する主要都市として発展している様に、この植民地も紀元前後には一大国際商業都市に発展したのだとか。最盛期には2万人もの人々が暮らした街の遺構が、現在では二つの州、二つの町にまたがって保存展示されています。
象徴的なのが、綺麗に修復され、実際に劇場として利用されてもいる野外劇場。また、劇場に正対してかつての神殿跡があります。この二つの遺跡のそばには、出土品やかつての植民地の様子を再現した模型などが展示されている、ローマ博物館(Römerhaus mit Museum)もあります。
ここまでは、バーゼルから近郊普通列車S1で所要11分のカイザーアウグスト(Kaiseraugst)下車、徒歩15分ほどです。お時間に余裕がなければ、ここを見るだけでも、スイスにおける古代ローマの一端に触れることができます。でも可能であれば、他の遺跡にも足を伸ばしてみて下さい。浴場跡や円形競技場など、スイス的な風景に溶け込んだ古代ローマの足跡を辿れます。個人的なおすすめは、かつての下水道の遺跡。地下の一部分を実際に歩いてみる事が出来ます。
とにかく広い範囲に約30もの遺跡があり、移動手段は徒歩か自家用車。という事で、全てを見て回るとなると半日は確実にかかります。お訪ねの際は、歩きやすい靴と服装でお越し下さい。
さか