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 スイスの中で一番標高の低いマッジョーレ湖畔。その中心地となるのが夏の映画祭で有名なロカルノです。低いといっても、海抜約200m。ゼロメートル地帯もある日本からすれば全く低くないのですが、海の無い山国としては十分に低い。しかもアルプス山脈の南側という事で、気候は温暖、植生も南国、街並みはすっかりイタリアな南国風リゾートです。かつてはマッジョーレ湖を経てイタリアとスイスをつなぐ交通の要衝、現在でもティチーノ州の州都ベリンツォーナから国鉄が、そして私鉄のティチーノ地方鉄道がイタリアのドモドッソラまで繋いでいます。
 旧市街地は2007年以降、一般車両の入らない地域となっていて、そぞろ歩きにぴったりです。中心となるグランデ広場Piazza Grandeには春になると巨大ステージ&スクリーンが登場し、映画祭の際にはメイン会場となります。その他の裏路地も南国の中世を思わせる佇まい。ただし、ここはやっぱりスイス。メインストリート以外を散策しようとすると、どうしても急坂を登ったり下ったりしなければなりません。歩きやすい靴と服装をお勧めします。
 
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 ロカルノ一番の見どころにして、中心部から標高約170m程上がったオルセリーナ地区にあるのが、冒頭の写真で全景をご紹介しているマドンナ・デル・サッソの聖所Santuario della Madonna del Sasso。15世紀末に創建され、数多くの巡礼者が訪れる巡礼参詣聖堂です。その起源は、1480年8月14日から15日にかけての夜、この地に隠棲していたフランティスコ派の隠修士バルトロメオが、聖母マリアが現れるのをみたという奇跡なのだとか。その後幾度かの増改築を経て、現在の姿になったのは1912年のこと。17世紀の改築時に作られた、「最後の晩餐」などの素焼きの彫像が各所に展示されています。聖堂内の装飾はとても豪華。通路を挟んで左右に分かれて設置されている珍しいオルガンがあります。素人にはどのような構造になっているのか、想像もつきませんが、それだけに興味をそそられます。

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 中心部から聖所まで自力で登って下る事も出来ますが、お勧めは1906年に運行開始したケーブルカーです。全長825m、最大勾配300‰。現在使用されている車両は1958年生れ。市街地の中を曲がりくねりながら、のんびりと登っていきます。山麓駅はロカルノ駅から大通りを挟んだ斜向かい。山頂駅は聖所の少し上。途中二箇所の停留所がある他、下りは聖所の真横にも乗り場があります。停留所に人がいれば止まってくれるようです。もちろん片道だけケーブルカーを利用して、片道徒歩で巡礼者の気分を味わってみるのも良いかもしれません。

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 旧市街を抜けた先、その終点に位置しているのが、ヴィスコンティ城Castello Visconteoです。12世紀に創建された古城ですが、14世紀半ば以降ミラノのヴィスコンティ家に所有され、増改築。現在目にする事のできる建造物の大半はこの時に作られたものだそうです。1925年にはロカルノ条約を生み出した国際会議がここで行われたのだとか。内部は現在、考古学博物館として公開されています。

 ロカルノからスイス西部(ヴァリス州やベルン州、レマン湖方面)へ向かう場合や、イタリア方面に向かわれる場合にお勧めなのが、ティチーノ地方鉄道、通称「 チェントヴァッリ(Centovalli=百の谷)鉄道」です。マドンナ・デル・サッソの聖所へ向かうケーブルカーと同じ人物によって建設計画が建てられましたが、第一次大戦の影響もあって難航し、開通したのは1923年。ロカルノから百の谷と呼ばれる渓谷地帯を抜けて、イタリアのドモドッソラまで走っています。全長約51.25km、最大勾配60‰、標高差約600mの国際列車です。山間部を走るため軌道は狭軌の1000mm、47の橋を渡ります。緑豊かな渓谷の中を所要約2時間の旅は、春の新緑から秋の黄葉など、四季折々の美しい姿を見せてくれます。残念ながら、車窓からはなかなか良い写真が撮れないので、こちらのリンクから鉄道会社の写真集をご覧ください。


さか